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「…私今なら織姫の気持ちがすごく分かる気が
する。」
「あれ、そんなロマンチストだったっけ。」
「…彦星は織姫のこと本当に好きなのかな?
だって天の川が何よ。
それぐらい愛の力で泳いで渡って行けばよくない?」
こんなこと言ったって、世の中にはどうにもなら
ないことがあるって分かってる。
愛の力なんてものだけじゃどうにもならないこと。
それでも文句を言いたくなってしまうくらいには
私は私の彦星が好きだから。
ふーっと煙草の煙を吐いた彼が同じように空を
見上げる。
その横顔をじっと目に焼き付けた。
「まぁ、うちの寂しがりやの織姫の為なら天の川を泳いで渡ってあげてもいいけど、だったらもう離れなければいいんじゃない?」
「えっ…?」
「結婚しよっか。」
何でこのタイミングでとか、寂しがりやの織姫って何よとか、言いたいことはたくさんあるはずなのに何一つ出てこない。
寂しくて仕方なかったはずなのに、そんな気持ちは一気に吹き飛んだ。
彼のたった一言によって。
「寂しがってたのは自分だけだって思うなよ?」
…本当の寂しがりやは案外、彦星の方かもしれ
ない。
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