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紛失したスマホ
カラン、カランッ
「ありがとうございましたー」
レストランを後にすると店員が元気な声で言った。
……思ったより遅くなちゃったな。
私、西城青葉は重い肩かけバックを持ち直した。
青葉はとある出版社に勤めている。
最近は編集や校閲の仕事出忙しいので、どうしても帰って来るのが遅くなりがちだ。
そのため、帰ってくる時間が日によってバラバラなため都内の出版社と自分の家を同じ区内に住むようにしている。
だからこの歩く距離が短いと思うと、少し気が楽になった。
歩道をてくてくと歩いていくうちに自分の家であるマンションに到着した。
近くのタワーマンションよりはずっと低いが、私はこれはこれで会社から近いということもあって満足していた。
青葉はエレベーターではなく階段を使って自分の部屋のある階まで登っていく。
これが青葉の日課だ。
トントンッと一段ずつ階段を上っていく。
最初は後半になるとばてていたが、もう慣れてしまった。
目的の階までたどり着くと、青葉はカギをスタンバイする。
自分の家まで着くと、ガチャッとカギを開ける。
玄関で靴を脱いで、バックを置いて、手を洗う。
洗面所にある鏡をのぞきこむと目の下にクマができていることに気づいた。
今日は早く寝なきゃなぁ……。
そう思いながらまぶたをこすった。
うがいもし終わると二人掛け用のソファにドカッと座る。
「おかえり、お姉ちゃん。ご飯いる?」
一緒に住んでいる妹・美桜がぐったりとしている青葉に声をかける。
「ううん、いらない。今日は食べてきた」
青葉はそう美桜に返した。
美桜は大学生出これからニ十分ぐらいのところで大学で法律を専攻している。
料理上手で朝と夜はだいたい美桜が作ってくれる。
私にとって、とても頼りになる妹だ。
「あっ、お姉ちゃん。明日の天気ってわかる? ちょっと今、手が離せないんだよね」
美桜がお皿を吹きながら青葉に聞く。
青葉はバックを手に取ると、ガサゴソとスマホを探した。
あれ、スマホがない……。
バックをあさってみるが、スマホはどこにもない。
青葉はついに、バックの中を一つずつ取り出していった。
「どうしたの?」
一瞬だけ動揺した美桜が心配そうな声で言った。
「スマホが……なくなった」
バタッ
タイミングよくバックが倒れて音を鳴らした。
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