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「沢口さんは鈴木のことを知ってる?」
「鈴木? 優花さん?」
「そう」
「知っています。優花さんも妹さんも、とても綺麗な人だって評判ですから」
「じゃ、僕と鈴木のことは?」
「石井さんから聞きました」
「小川さんは僕たちのことを知ってる?」
「え? ええ。綾と話をしたことがあります」
「それじゃ、野牧も知ってたんだ」
「はい」
「今度、野牧と話をしてみよう。つらい役回りだけどね」
僕は大樹を見た。
「行こう」
そう言って歩き出すと、大樹は沢口たちに手を振り、付いてきた。
「どういうことだ?」
歩きながら大樹が尋ねる。
僕は振り返って沢口たちの姿を確認した。まだその場にいて、二人で何か話している。
「野牧はきっとお前のことが好きなんだと思う」
「ええ? 俺を?」
「確か一年の時、何人かの女の子から告白されたとか言ってたよな。何でお前がそんなにもてるのか、俺は不思議でしょうがない」
そう言って僕は大樹を見た。
「俺が知るかよ」
大樹はつまらなそうに言った。
優花だって、何でこんな奴に惚れてるのか、さっぱりわからない。
「野牧が俺のことを好きだと仮定すると、沢口と俺を別れさせて、そのあと自分が俺と付き合うためにあんな手紙を書いたということか?」
「多分ね」
「えらく短絡的だな」
「沢口だけにあんな手紙を出したのなら、いつも近くにいる自分がやったとわかってしまうかもしれない。だからそのカモフラージュとして自分とは関係のない鈴木たちにも同じ手紙を用意して下駄箱に入れた。鈴木たちだけじゃない。まだ他にもいるかもしれない。その子たちを安心させるためにも、野牧に会って話をしなければならない」
「そうか」
「それにもうひとつ。沢口はお前が三年生の美人と仲良くしていると言っていた。多分そんな話を沢口にしたのも野牧だろう。俺が思うには、最初お前と沢口を別れさせるつもりで、お前が三年生の子と親しくしてると沢口に言った。でも二人は別れそうにないから、今度は手紙で二人を別れさせようとした」
「そんなことまでするか?」
「それは野牧と話をしてみなければわからない。けれど、それが真実のような気がする」
数日後に、僕は沢口の手を借りて野牧を呼び出した。沢口や大樹はいないほうがいいと思い二人だけで話をした。
僕の話を聞いた野牧は泣きながら、僕の話したことが事実だと認めた。
僕は手紙を下駄箱に入れた人数を訊いた。沢口、優花、優菜のほかにもう一人。
それから、大樹はちょっとやそっとじゃ、沢口に対する気持ちは変わらないということと、何があってもずっと友達でいたいという沢口の言葉を伝えて、野牧と別れた。
その数日後に、野牧が手紙を下駄箱に入れたもう一人の子に会った。冗談のつもりの手紙が間違ってその子の下駄箱に入れられてしまったから、手紙の内容については気にしないようにと話した。
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