いつか君に巡り逢える

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 海に行こうって言いだしたのは勇介だった。  夏に芋を洗うような人でごった返す砂浜は、今、どうなっているのだろう。そう話したのは大樹だ。  十月も半ばになった。今頃海水浴をする人もいないだろうし、人っ子一人いない砂浜で波が躍っているだけだろうか。下手なサーファーくらいいるかもしれない。  そんな話をしているうちに、勇介と大樹、それに僕の三人は海に遊びに行くことになった。夏休みに何度か泳ぎに行ったけれど、まさかこの時期に泳ぐわけじゃない。ただぶらぶらと砂の上を歩くのも面白いかもしれない。  待ち合わせの駅に最初に着いたのは僕だった。  日曜日の駅前は、午前十時前だというのに、多くの人でごった返している。ぼけーっと突っ立ているのもなんだし、勇介か大樹が早く来ないかなと辺りを見渡した時だった。  人の波の中でバチッと目が合った。  ほんの二、三秒のことだったと思う。でも、何十分も見つめあっていた気がした。  ハッと我に返って、慌てて視線を逸らす。とんでもない美人だ。僕と同い年くらいだろうか。美人というか、可愛いというか、とにかく今まで見たことのないほどの美少女と見つめあってしまった。  心を落ち着けてから、もう一度その子を見ようとした時、声をかけられた。 「何考え込んでんだよ」  ジーパンにトレーナー姿の大樹だった。  こいつは口が悪い。だから友達も少ない。僕たちは大抵、三人でつるんでいるけれど、僕の交友範囲は広い。大樹は僕たちのほかに話をする奴なんて二人か三人しかいない。おまけに背は高くルックスがいいから女の受けはいい。余計に男どもから反感を買ってしまうが、本人は全然気にしていない。と言うより、細かいことは気にしない性格なんだ。  大樹と馬鹿なことを話しているうちに、ふっと女の子のことを思い出し、人混みの中を捜した時には、どこにもそれらしき姿はなかった。
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