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ふたりの食卓
私には両親がおらず、年の離れた兄がひとりだけいます。私が幼い頃に死んでしまった両親のかわりに兄が私を育ててくれました。
私は優しくて料理上手なお兄ちゃんが大好きです!
お兄ちゃんの話では私は幼い頃から体が弱く、よく熱を出して寝込んでいたらしい。そんなときはお兄ちゃんが特製ジュースを作ってくれたのをよく覚えている。あの赤いジュースを飲むと元気になれるんだよねー。
そんな私も高校生になった。今まで危ないからと台所には近寄らせてもらえなかったが、私だってたまにはお兄ちゃんの役に立ちたいのだ。なんと言っても今日はお兄ちゃんの誕生日。サプライズするにはもってこいの日だろう。
お兄ちゃんを驚かせるためにこっそり料理を作ろうと企み、忍び足で台所へと侵入した。
普段は絶対に開けるなと厳しく言われている冷蔵庫の扉に手をかけ、ごくりと息を飲む。一体ここにはどんな食材が入っているのか……それによって今夜のサプライズ料理が変わってしまう。ここで自分のお小遣いを使って材料を買ってこないのは決してケチとかではなく、うっかりアイドルのCDアルバムをフルコンポしてしまったせいである。特典につられて、つい!
しかし、お兄ちゃんは異常なくらい私が台所に近づいたり冷蔵庫に興味を持つのを嫌う。それはもうすごい剣幕なのだ。
「もしかして、ゲテモノでも食べさせる気だったりして?」
なーんて冗談を呟き「そんなわけないか」と笑いながら冷蔵庫の扉を開ける。
「?!」
私はその中に入っている“それ”を見て一瞬言葉を失った。
そこには色とりどりの野菜と、人間の腕が入っていたのだ。
「きゃあぁぁぁ!」
私が思わず叫び、逃げるように体を捩ると腕が扉にぶつかる。その衝撃でピーマンがコロリと足元へ落ちてきた。
「ーーーーここでなにをしているんだい」
「!」
背後に気配を感じ視線を動かすと、お兄ちゃんがいた。いつもと同じ笑顔のお兄ちゃんの顔は赤く汚れていて、右手には同じく赤く汚れた包丁が握られていた。
「おにいちゃん!これは一体ーーーー」
私は震える指で“それ”を指し示した。
「ピーマンなんて、食べさせるつもりだったの?!」
激怒する私を見て、お兄ちゃんは「こっそりいれようと思ってたのにバレちゃったか」と苦笑いしたのだった。
電灯がわずかに揺れ、その光に照らされた少女の影は兄とは違う異形の形をしていたーーーー。
***
その昔、少年の目の前で両親が自殺をしました。少年が冷たくなっていく両親を眺めていると、なんと両親だった物の影から化け物が出てきたのです。
化け物は少年を見て驚き……赤ん坊を差し出しました。それが少女です。
少年は両親だった物を切り分け、保存し、少女に食べさせて育てました。
両親だった物を全て食べ尽くすと、少女のためにどこからか“食料”を持ってくるようになりました。
年の離れた仲の良い兄妹は、今日もふたりで仲良く食卓を囲みます。
「今度、クラスメイトの山中くんを連れてきてもいい?」
「お友達かい?」
「うん、話も合うし一緒にいると楽しいの。それにとっても美味しそうなんだよ!」
にっこりと笑顔を見せる妹の姿に兄は嬉しそうに微笑むのでした。
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