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朝焼けとお願い
「もう、疲れたんだ。ねえ、お願い……」
朝焼けの空に、そっと本音を落とした。
自分でも、誰に何をお願いしたのかわからなかった。
もう、何もかもが嫌になっていた。
憎たらしいほどに鮮やかな空は、私のつぶやきなどどうでもいいのだろう。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、私の上を流れていく。
少し、寂しかった。
自分だけが、時間の流れに取り残されているような気がした。
本当は、苦しかった。
何も出来ない自分が、嫌で嫌でたまらなかった。
だけど私は、私には何も無かった。
楽しかった子供の時間は終わり、気づけばただの人になっていた。
何も変わらないと、そう思っていた。
幼い頃から眺めていた朝焼けも、私も、私の周りも。
でも、違った。
気づいていたつもりだったのに、気づかないフリをしていた。
変わらないはずなんて、無かったのに。
私も、変わってしまったのだろう。
幼い頃、星に願った"お願い"と今の私の"お願い"が、同じもののはずがない。
変わらなければいけない。
時の流れに取り残されたくなければ、私たちは変わるしかない。
その中で、変わらないものを見つけるのが、きっと大人と言うものなのだろう。
だけど、私は、
私はまだ……
ふ、と息をついて、お願いの続きを吐き出した。
「お願い、もう少しだけ、このままの時間を。」
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