宇宙の歯車

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宇宙の歯車

宇宙は、歯車だ。 少しでも狂えば、今の世界にはなり得なかった。 或いは、狂った歯車を排除してきた結果が、今の世界なのかもしれない。 どちらにせよ、宇宙は精密な機械みたいに動いている。 少しでもズレが生じれば、崩れてしまうような、そんな脆い世界で私たちは生きている。 だけど少し、世界は狂い始めたのかもしれない。 少しずつ、本当に少しずつ、宇宙が狂う音がする。 それは、どこか遠くで大きな氷が溶け落ちる音。 それは、吹き荒れた風が、溢れた水が、誰かの家を壊す音。 それは、住処を追われた動物たちが、居場所を求め彷徨う音。 それは、当たり前だった日常を、変えていく音。 人は、己を特別だと思いすぎた。 そして、自らが宇宙の歯車であることを、忘れてしまったのだろう。 歯車が自我を持ち、そうして世界を狂わせる。 小さな歪みはやがて取り返せない傷となる。 今もどこかで、歯車の狂う音がする。
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