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ソラの邂逅
夕焼けの空の中に、君が消えていった日を覚えている。
手を伸ばすことすらできず、ただ、夕陽に飲まれていく君を見ていた。
どうして手を伸ばさなかったのかはわからない。
でも、きっと手を伸ばしても、君を救えはしなかったのだと思う。
君がいなくなって、何が変わっただろうか。
いや、何も変わっていないのだろう。
幾度となくあの日と同じ夕陽を繰り返して、もう空を見て心を痛めることも無くなった。
君をどんなに想っても、ただ楽しい思い出だけが浮かぶようになってしまった。
だからだろうか。
変わらなかった日常が、恐ろしくなった。
君との楽しい思い出が、虚しくなった。
君を思い出して笑っていられることが、それが普通になっていくことが、とても虚しくて、恐ろしい。
怖くて、怖くて、たまらなくなって。
私はいつもと同じ夕焼けに、飛び込んだ。
そうして真っ赤な夕陽に吸い込まれながらやっと、あの日の君に手を伸ばせたんだ。
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