『私』は『アリス』

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『私』は『アリス』

「アリス」と誰かが私を呼んだ。 そう、確かに私のことを「アリス」と呼んだのだ。 そうだ、私はアリス。 そこらじゅうにいるありふれたトランプ兵なんかとは違う。 気の狂った帽子屋でも、呑気なチェシャ猫でも、慌ただしい白うさぎでもない。 私は、アリス。 ハートの女王を恐れへりくだるこの世界の住人とは違う。 私はアリス。 トランプ兵も、ハートの女王も怖くなどない。 まったく、さっきまであんなにも恐れていたのが嘘のようだ。 もう怖くない。 だって私はアリスなのだから。 アリスを、私を追っているトランプ兵が可哀想だ。 きっと今頃女王様にギロチンにかけられているにちがいない。 だってアリスはここにいるのだもの。 ああ、なんて可哀想なトランプ兵。 でも、仕方がないわよね。 さあ、帰ろう。お姉様が心配するわ。 ところで私はさっきもアリスだったかしら。 なんて、言ったところで誰もわからないわ。 だってどう見ても、私はずーっとアリスでしょう? ここは不思議の国。 何が起こっても不思議じゃないと思わない?
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