月日

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

月日

月日は傷を癒してはくれない。 誰かがそういったのを私はきっといつまでも忘れない。 あの日、何があったのか幼い私にはわからなかった。 誰かが苦しんでいることも、誰かが悲しんでいることも知らず、ただ暗くて寒い夜を過ごした。 覚えているのは逃げる途中で電気が落ちたこと、校庭で揺れるポールを眺めたこと、そして夜、星がただただ綺麗だったこと。 幼い私は無邪気にも夜空を見上げていたのだ。 月日が経って、私は大人になった。 歳を重ねるごとに、次第にあの日何があったのかを知ることになった。 その中で悲しい言葉をいくつも聞いた。 『月日では、この深い傷は癒せない。』 私にそう語る人がいた。 その言葉が苦しみを物語っているのだ。 私にはその苦しみはわからない。 どんなに知ろうと思っても、それは経験した人にしかわからないのだ。 だからこそ、寄り添いたい。分かち合いたい。 私はちっぽけな人間で、大したことができるわけじゃない。 だけど、お願い。そばにいさせて。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加