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月日
月日は傷を癒してはくれない。
誰かがそういったのを私はきっといつまでも忘れない。
あの日、何があったのか幼い私にはわからなかった。
誰かが苦しんでいることも、誰かが悲しんでいることも知らず、ただ暗くて寒い夜を過ごした。
覚えているのは逃げる途中で電気が落ちたこと、校庭で揺れるポールを眺めたこと、そして夜、星がただただ綺麗だったこと。
幼い私は無邪気にも夜空を見上げていたのだ。
月日が経って、私は大人になった。
歳を重ねるごとに、次第にあの日何があったのかを知ることになった。
その中で悲しい言葉をいくつも聞いた。
『月日では、この深い傷は癒せない。』
私にそう語る人がいた。
その言葉が苦しみを物語っているのだ。
私にはその苦しみはわからない。
どんなに知ろうと思っても、それは経験した人にしかわからないのだ。
だからこそ、寄り添いたい。分かち合いたい。
私はちっぽけな人間で、大したことができるわけじゃない。
だけど、お願い。そばにいさせて。
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