1.蛍

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「……迷惑なら初めから拾ってねえよ」  本来なら、こんな幼い子供に言わせるべき言葉じゃねえだろ。なんだか遣る瀬無い気持ちになって、辛うじて出たのは、そんな気休めにもならない言葉だった。 「申しわけないもん……。わたしが、何にもできないから、ここにいてもじゃまになるだけだよ」  それはいやなの、と顔を伏せる蛍。 「力もないし、ほかのお兄さんお姉さんたちみたいに畑も耕せない。だから、わたし、『いらない子』なんだって。頑張ったけど、役立たずだから……」 「そう言われたのか?お前の家族に」 「……うん」  頷いた蛍は、自分の膝にそのまま顔を埋めた。 「だから、構わないで」 「そしたらお前は野垂れ死ぬだけだろう」 「…………ーー逃げ出したときは、死にたくないって思ってた……けど、もういいんだ。もう、どうなってもいいの。せっかく助けてくれたのに、助けてくれたけど、迷惑になるのはやっぱりいやだ……」  縮こまる蛍にかけられる言葉はあいにく持ち合わせちゃいねえが、迷惑をかけたくねえと言ったって、たった七つ八つの子供が誰にも頼らず生きていくなんて無理な話だ。それが肉親だろうが、他人だろうが。 「だったら、恩返しすりゃいい」
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