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「重松弘巡査部長、あなたは、座間市内の『倉木医院』の院長、倉木昭秀氏に、座間警察署捜査課が調べていた『人材派遣会社アクア』に関する捜査情報を流した。これは事実ですか?」
「事実です。しかし、捜査情報全てを伝えたわけではありません。また、その情報を倉木医師が悪用することはないと信じておりましたし、それは今も変わりません」
「あなたの主観は関係ありません。事実のみを述べてください」
ピシャリ、と左の男が言う。片桐の表情は全く動かない。何の感情も感じさせない瞳で重松を真っ直ぐ見続けている。
「失礼しました」と頭を下げ、続きを待つ。
「あなたにとって、倉木氏は主治医と言って良い存在でしたね?」
右の男の質問が来る。
「はい」と応える重松。自宅が近いこともあり、自分だけでなく、妻も2人の子供達も、長年世話になっているのは事実だ。
「その人物がアクアと係争中であることは、知っていたんですね?」
「はい」
「どのようなかたちで知りました?」
「倉木医師本人から相談を受けました。名目上人材派遣会社となっているアクアが、契約するホームレスと思われる人々を、ケガを負ったとして何名か送り込んできた。必要ないのに強引に長期入院をさせるよう迫り、断ると脅迫や嫌がらせのような行為をする、ということでした」
アクアは悪質な企業だ。裏では反社会勢力とつながっているという噂もある。倉木医師への入院強要は、巧妙な保険金詐欺の疑いがあった。
ホームレスや一人暮らしの障害者等を巧みに騙し契約させる。その際保険会社とも契約を行う。そして、無茶な仕事場に送ってケガをさせたり体調不良にさせる。通院や投薬で済むのに入院に持ち込み、代理人として保険金を詐取するのだ。
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