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ナオ達の中学生活には『いたずら』が欠かせなかった。
日常茶飯事でいたずらをしていたのである。
これは小学校時代から変わらないものであった。
怒られる事も多々あったが、卒業を間近に控えた今となっては大半の先生達からも許容されるようになっていた。
しかし、当然のように今でも頑なに認めようとしない先生もいるのであった。
生徒はいうと、これはもう大歓迎。
三年も半ばくらいになると、「今日はどんないたずらするん?」とか「次はあの先生に仕掛けてよ」などといった多大な期待もかけられるようになっていた。
そんなこんなで、中学最後の晴れ舞台『卒業式』でナオ達が何か仕出かすのを楽しみにしているのは、当事者達以外にも沢山いたのである。
「何かいいアイディアはあるの?」
「まぁ、いくつかはな」
ナオがトモに自信のある顔を向ける。
周りから『いたずらの天才』と呼ばれているだけあって、ナオの頭の中には既に閃きによって生まれた“いたずらの種”があるようだ。
あとは思考の水をあげて芽吹かせればよい。
「じゃあ、うちでそのアイディアを聞こうか?」
タカがみんなを自宅に誘う。
「いいわね。ちょうどお腹も空いてるし、おじさんにカルボナーラ作ってもらおうよ」
「賛~成~!そうと決まったら早く行くわよ」
トモの言葉にリナが真っ先に同意して、男性陣の意見も聞かずに二人はさっさと歩き始めた。
ちなみにタカの家は『四川』というイタリアンのレストランを営んでいる。
「ちょ、ちょ待てよ!ったく、しょうがねぇな」
ナオが二人の後ろ姿を見送りながらタカに苦笑いを向ける。
「僕達も行こうか?」
ナオに一言声を掛けると、タカは静かに歩き始める。
「だな」
ナオは足元の石ころを軽く蹴ると、タカの後に続いた。
四人の背中がどんどん小さくなっていく。
彼らの歩く先に待っているのは、はたして何なのか?
それは誰にも分からない・・・が、おそらく『四川』のカルボナーラであろう。
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