印刷麺レストラン

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「なぁ。三高亭(みたかてい)で食ったラーメンの味、覚えてるか?」  拓真がそろそろ風呂に入ろうと腰を浮かせた夜十時、中学時代からの友人、片岡豪(かたおかごう)から電話が来た。最後に会ったのは大学1年の時。およそ2年前だ。  連絡を取り合っていなかった2年間を飛び越えるような話の切り出し方に、林田拓真(はやしだたくま)は戸惑う。 「三高亭って、地元にあったラーメン屋?」 「そうそう。味覚えてる?」 「覚えてるわけないだろ。最後に食ったの、高校生の時――3年前だぞ」  そうだよな、と電話口の向こうで豪が笑う。 「インサツメンレストランに行かないか?」 「は?」  インサツメンレストラン。理解できなかった言葉が、音の羅列として耳の中を素通りしていく。 「コピーの印刷、そしてラーメンの麺で『印刷麺』だよ」  豪が説明してくれるが、全然意味がわからない。 「印刷麺レストラン?」 「そう」 「それはどんな店なの? 三高亭と何か関係があるの?」 「印刷麺レストランはね」  豪の声はそこで途切れた。拓真を焦らしているのだ。電話の向こうでにやりと笑う豪の姿が目に浮かぶようだった。  拓真は舌打ちをしそうになる。しかしそんな反応を見せれば豪が喜ぶだけだ。拓真はぐっと堪え、豪が話し始めるのを待った。
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