24人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぁ。三高亭で食ったラーメンの味、覚えてるか?」
拓真がそろそろ風呂に入ろうと腰を浮かせた夜十時、中学時代からの友人、片岡豪から電話が来た。最後に会ったのは大学1年の時。およそ2年前だ。
連絡を取り合っていなかった2年間を飛び越えるような話の切り出し方に、林田拓真は戸惑う。
「三高亭って、地元にあったラーメン屋?」
「そうそう。味覚えてる?」
「覚えてるわけないだろ。最後に食ったの、高校生の時――3年前だぞ」
そうだよな、と電話口の向こうで豪が笑う。
「インサツメンレストランに行かないか?」
「は?」
インサツメンレストラン。理解できなかった言葉が、音の羅列として耳の中を素通りしていく。
「コピーの印刷、そしてラーメンの麺で『印刷麺』だよ」
豪が説明してくれるが、全然意味がわからない。
「印刷麺レストラン?」
「そう」
「それはどんな店なの? 三高亭と何か関係があるの?」
「印刷麺レストランはね」
豪の声はそこで途切れた。拓真を焦らしているのだ。電話の向こうでにやりと笑う豪の姿が目に浮かぶようだった。
拓真は舌打ちをしそうになる。しかしそんな反応を見せれば豪が喜ぶだけだ。拓真はぐっと堪え、豪が話し始めるのを待った。
最初のコメントを投稿しよう!