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「お二人とも上手にできましたね。こんなにきれいにできる方はなかなかいらっしゃらないですよ」
店員のお世辞を聞き流し(豪は真に受けて鼻の下を伸ばし切っていたが)、次の行程へと移ることになった。
店の右手側、壁際のテーブル席へと案内される。拓真と豪は、紙が飛ばないように見守りながら、器を手に慎重に歩いた。
席に座ると、テーブルの真ん中には保温ポット、計量カップが2個、キッチンタイマー、そして割り箸とレンゲが用意されている。
「それでは、器に500mlのお湯を注いでください。5分待てば完成です。ごゆっくりどうぞ」
店員はお辞儀をすると拓真たちに背を向け、また入口へと向かった。別の客を案内するようだ。
「本当にできるのかよ」
拓真はまゆをひそめ、小声で豪に話しかける。
「ツイッターで見た人たちは、うまそうに食ってたぜ。ちゃんとできるんだろ」
豪は真剣な顔つきで、計量カップでお湯をはかっている。
2,000円。拓真は口の中で唱えて、計量カップにお湯を入れた。
「いいか。やるぞ?」
豪が拓真に声をかけ、二人同時に計量カップから器にお湯を注ぐ。紙がぐにゃりと曲がる。「スープ」が溶け出し、上に乗っていた「麺」と「具材」がゆっくり沈んでいく。豪がキッチンタイマーをスタートさせた。
やがて「麺」と「具材」が「スープ」を吸い、膨らんできた。「ラーメン屋さんごっこ」だったものが、「三高亭のラーメン」に変わっていく。
「意味わかんねえ」
拓真は呆然とした。豪がスマートフォンで動画を撮っているのを見て、慌てて同じことをする。
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