印刷麺レストラン

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 5分後、セットしたタイマーが鳴る。  だしがきいた醤油の香りが、器から上がっている。 「完全にラーメンになったな」 「ツイッターで動画を見てたけど、生で見ると興奮するなぁ!」  拓真と豪は唾を飲み込むと、顔を見合わせて頷いた。 「いただきます」  拓真はレンゲを器に沈め、スープをすくい取った。どこから出てきたのかわからない油が浮いている、琥珀色の液体。意を決して口の中に入れると、魚介系の香りが鼻に抜けていく。  一方の豪は、真っ先に麺をつかんだ。見た目は完璧なちぢれ麺。豪は一瞬ためらったのち、勢いよくすすった。そして、「うま」と声を漏らす。 「目の前に学ランが見える」  豪はチャーシューと麺を口に放りこんでいく。 「つまり?」  麺とスープを交互に味わっている拓真が尋ねる。 「高校時代に戻った気分ってこと。完全に『三高亭のラーメン』だわ、これ。うま。紙とは思えない」 「紙がラーメンになるなんて、どういう原理なのかさっぱりわかんないし、三高亭のラーメンの味も忘れてたけど、このラーメン食べて思い出したかも。美味いな」  拓真は、太すぎる麺をつまみ上げながら言う。 「はさみの腕をあげたら、もっとおいしいだろうな」  豪がスープを吹き出した。
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