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「お待たせー待ったー?」
内股で体をくねらせながら豪がやってくる。
「きもいからやめろ」
「えー。タクマに『彼女との待ち合わせ』気分を味わわせてあげようと思ったのにぃ」
「お気遣いなく。俺は豪との待ち合わせで充分です」
「おお、俺との待ち合わせを喜んでくれるというのだな! まったく、嬉しいことを言ってくれるじゃないか、親友よ!」
豪が両腕を広げて近づいてくるのを、拓真は身を翻してかわした。
「いけず」という豪のつぶやきを無視して、拓真が言う。
「で、どこ行くんだよ」
「ここから電車で1時間。更にバスで20分」
「結構遠いなあ」
「昨日電話でも言っただろ? 『なかなか行きづらい場所にある』って。さあ行こう! 三高亭の印刷麺を味わうのだ!」
豪が空に向かって拳を突き上げる。拓真は嘆息しながらも、口元が緩んでいた。
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