24人が本棚に入れています
本棚に追加
「よし、着いたぞ」
電車とバスを乗り継ぎ、ようやくたどり着いた「印刷麺レストラン」は、民家が立ち並ぶ通りの角にあった。太い道路を挟んだ向かいは畑である。ガラス張りで、コンビニの居抜きのようだった。開店前にもかかわらず、すでに十人ほどが並んでいる。
「いろいろと意外だな」
最後尾につきながら、拓真が呟く。
「そうだろう」
豪はなぜか得意げだ。
「俺も、ツイッターで写真を見てなければ辿り着けなかったと思う」
スマートフォンを行列に向ける豪。閑静な住宅街にシャッター音が響く。
「ツイートしようっと。ええと『念願の印刷麺レストランに来ているなう』」
豪は、わざと声を出しながら文字を入力していく。「なうは古いよ」とつっこんで欲しいのだろうが、拓真はその手には乗るまいと思った。
ポケットをまさぐり、スマートフォンを取り出す。
午前10時半。開店まであと30分。
最初のコメントを投稿しよう!