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「まず、こちらでお好きなラーメンをお選びください」
店員の女子が指差す先には、ラーメン屋の入口でよく見る券売機がある。しかし、左端には「簡単」「普通」「難しい」という見慣れない文字があった。上から下に行くにつれて「難し」くなるらしい。何の難易度なのだろうか。
「購入していただいた『印刷麺』は、こちらから出てきます」
と店員が手のひらで券売機の隣の機械を指す。
「え? コピー機から出てくるんですか?」
「はい。そうです」
拓真の疑問に、店員がにこにこと答える。
「印刷麺レストランですから」
豪は券売機に目を走らせ、一点で止めた。
「あった、これだ」
豪が「三高亭 醤油ラーメン」のボタンを指さす。「新商品!」というポップ体が、赤いギザギザした吹き出しの中で踊っている。左側を見ると難易度は「普通」らしい。
「これでいいよな?」
おう、と言いながら拓真が値段を見る。
「2,000円!? 本物より1,200円も高いじゃん!」
思わず漏らすと、店員が口を開いた。
「食べられる特殊なインクと紙を使っておりますので。ご了承ください」
店員の笑みはくずれない。プロだ、と拓真は感心した。
「ここまで来たんだから、俺は食うぞ」
豪は財布から千円札2枚を券売機に入れ、ボタンを押した。コピー機の唸り声が聞こえ、A4の厚紙が2枚吐き出される。
拓真も同じものを購入し、出てきた紙をじっくり観察した。
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