印刷麺レストラン

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 紙の半分の大きさの黄色い四角と、大きめの茶色い丸が描かれたのが1枚。もう1枚には、小さめの茶色い長方形が4つ連なったもの、黒い四角、薄茶色の楕円の中に黄色い丸が描かれているもの、茶色い丸が2個、緑の三角が2個描かれていた。それぞれの図形の下には明朝体で、「麺」「スープ」「めんま」「海苔」「煮卵」「チャーシュー」「ネギ」と書いてある。 「なんだ、これ」  拓真は紙をひっくり返したり、匂いをかいだりしてみたが、なんの変哲もない画用紙のように思えた。豪は、「これが本物かぁー」と何度も頷く。 「では、あちらに移動してください」と店員が指したのは、長机だった。  指示に従って着席すると、テーブルの真ん中にはペン立てがあり、はさみが五本刺さっていた。足元にはゴミ箱があり、紙くずが半分入っている。 「こちらが器です」  と店員が背後から差し出してきたのは陶器のラーメン鉢であった。例の、赤い四角のぐるぐると、龍が描いてあるやつである。 「器の中に、先ほどの紙を切り抜いて入れていってください。まずはスープ、その後に麺、最後にトッピングを乗せると出来上がりがきれいですよ。また、麺の太さやトッピングの形などは、お客様の切り方で決まります。ちぢれ麺が召し上がりたい方のために、『なみなみに切れるはさみ』もご用意しておりますので、どうぞご活用ください」  出来上がりましたら呼び出しボタンを押してくださいね、とお辞儀をして、店員が立ち去った。
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