印刷麺レストラン

8/16
前へ
/16ページ
次へ
「どういう、こと?」 「ペーパークラフトみたいなもんだな。へへ。俺のはさみさばきを見やがれ!」  戸惑う拓真をよそに、豪ははさみで迷いなく「スープ」を切り抜きはじめた。それはそれは、きれいな丸であった。器にはめると、半分の深さのところで止まった。 「次は麺だぜ! 三高亭(みたかてい)は細ちぢれ麺だったよな」  豪が「麺」を四角形に切り抜いた後、「なみなみに切れるはさみ」を手に取った。歯の形が波形になっており、普通のハサミと同じように使うだけで、切り口が「なみなみ」になるみたいだ。とはいえ、使い方にコツがいるようで、豪は慎重に歯を合わせている。1本切り終わる頃には汗だくになっていた。 「ふぅ。思ったより神経使うなぁ」  豪が「スープ」の上に1本の「麺」を入れながら呟く。  拓真は図形が印刷された紙を眺める。これで2,000円。どう見ても食べ物とは思えないが、安くはない金を払ったのだから、もう後戻りはできない。それなら丁寧に作らねば、と覚悟を決め、一つ深呼吸するとはさみを入れた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加