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「どういう、こと?」
「ペーパークラフトみたいなもんだな。へへ。俺のはさみさばきを見やがれ!」
戸惑う拓真をよそに、豪ははさみで迷いなく「スープ」を切り抜きはじめた。それはそれは、きれいな丸であった。器にはめると、半分の深さのところで止まった。
「次は麺だぜ! 三高亭は細ちぢれ麺だったよな」
豪が「麺」を四角形に切り抜いた後、「なみなみに切れるはさみ」を手に取った。歯の形が波形になっており、普通のハサミと同じように使うだけで、切り口が「なみなみ」になるみたいだ。とはいえ、使い方にコツがいるようで、豪は慎重に歯を合わせている。1本切り終わる頃には汗だくになっていた。
「ふぅ。思ったより神経使うなぁ」
豪が「スープ」の上に1本の「麺」を入れながら呟く。
拓真は図形が印刷された紙を眺める。これで2,000円。どう見ても食べ物とは思えないが、安くはない金を払ったのだから、もう後戻りはできない。それなら丁寧に作らねば、と覚悟を決め、一つ深呼吸するとはさみを入れた。
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