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「できたぞ」
豪が声を上げ、はさみを置いたのは、切りはじめてから十分後のことであった。拓真が豪の器をのぞく。「はさみさばき」に自信があるのも納得の出来だった。しかし、紙でできているから、見た目は完全に「ラーメン屋さんごっこ」である。
「拓真はへたくそだな!」
麺を波形に切るのは諦め、途中から直線の「太麺」になっている拓真の器を見て、豪が笑った。
「美術の評定、2だったからな」
拓真がおぼつかない手つきで「チャーシュー」を切っている。紙ではなくはさみを回して切ろうとするので、円がだんだんいびつな形になっていく。
「今までどうやって生きてきたんだよ。はさみの使い方は小学生までで習得しとけ。貸せ」
見かねた豪が、拓真の手から紙をひったくり、切り終えたものから器に盛り付けていった。
「よし、これでいいはずだ」
豪は、はさみをペン立てに戻し、ゴミを捨てると、壁に取り付けられた呼び出しボタンを押した。
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