✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼

2/7
前へ
/8ページ
次へ
 こんなこともよくあったな、と懐かしくその様子を眺める。一番上手くやっていた頃には、よくこうして何か食べるものと呑むものを彼は持参して来た。そんな時、袋から出て来るものは決まっている。 「油くらい、あるわな」  出来合いのものではない。白いスチロールにパックされたそれは、肉だったり魚だったりする。そんなふうにして、酒のつまみを作って、集まったメンバーなどに振る舞っていた。  タイジの返事も待たず、彼は台所を端から改め始めた。 「変わんねーのな、お前」 「何がよ」 「まだ料理とかすんのか」 「しねーと、食えんがね」  当たり前のように言う。その返答まで変わってはいない。  あちらこちらの扉を開け閉てする音が止むと、今度は楽しそうな歌声が聞こえてくる。  妙に、穏やかだ。  慣れない平穏にどう対処すればいいものかと、タイジは部屋を見回す。ここは、自分の部屋の筈だ。何をしていればよいものか、など家主であるタイジ自身が決めればよいことだ。それなのに、何も思いつかない。  心なし狼狽ている自分が可笑しく、つい笑いがこぼれてしまう。 「っだあ?」  笑い声を聞きつけ、ユウセイが振り返る。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加