明日の天気は雨です。

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朝の時間、当然図書室の利用者はいない。しかし朝から鍵が開いているとは思わなかった。 「知らなかったでしょ、今日はここだけ閉め忘れいるみたいなの」 「なんでそんなこと……」 「私、何回も今日を繰り返しているから」 もしかしてとは思ったが、改めて言葉にされると戸惑う。とても現実的な言葉ではないから。 でも事実、僕も一昨日と昨日を繰り返した。それを知るのが僕だけじゃないということに、心から安堵した。 「……柊さんはいつから繰り返しているの?」 「分かんない。数えようと思ったけど、メモしても消えちゃうしね」 その言葉から、僕みたいにここ数日ってわけじゃなさそうだ。 「だから学校中に聞いて回ってたんだね」 「そうなの、だけど誰も何も覚えてないしさ、笑っちゃうよね」 「いや、笑えないけど……」 本当に面白い話をしているみたいに柊美雪はけらけら笑う。あまり気にしない性格なのか、一周回っておかしくなってしまったのか分からないが、柊美雪がこんなにも明るく笑うとは知らなかった。 「それで、坂上君はどうして同じ日を繰り返しているって気が付いたの?」 「どうしてって聞かれても、天気が違うなぁと思って……」 「何か理由があるはずだよ。いつもと違うことを何かしなかった?」 いつもと違うこと、いつもと違うこと……。 「……本を買った、恋愛小説」 「どうして?」 「どうしてって……」 僕が柄にもなく恋愛小説なんかに手を出した理由。理由は明白だ、ちゃんと覚えている。だけど、言葉にするのは憚られる。 「どうしたの?言えない理由でもあるの?」 「別にないけど……。……たんだ」 「え?」 「彼女が欲しくなったんだ!」 羞恥心を紛らわせるために声を張った。が、余計に恥ずかしくなった。大声で言うことでもないし、それに彼女が欲しくなったからって恋愛小説って、やっぱり安直過ぎる。 柊美雪は少し驚いた後……鼻で笑った。 「ごめんごめん!でも、そんな理由だとは思わなくてさ」 直ぐに苦笑いを浮かべながら平謝りした。
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