明日の天気は雨です。

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「……で、柊さんはどうやって気が付いたの?」 少しでも柊美雪の恥ずかしい理由を聞き出してやろうと思ったのに、僕とは違いけろっとしている。 「私?私は最初から気が付いていたんだと思う。昨日と同じニュース流れているし、授業内容も一緒だったしね。最初はドッキリかと思ったんだけど、次の日そのまた次の日も全く同じだったから、ドッキリじゃないって気が付いたの」 鋭いんだか鈍いんだか分からないな、この人は……。 「って、私のことはどうでもいいの。それより今日という日をどうやって抜け出すかが問題なの」 「それはそうなんだけど、そもそも柊さんはなんで今日を繰り返しているか知っているの?」 柊美雪はこれ見よがしに胸を張った。 「ふふん、私だって無駄に今日を繰り返していたわけじゃないの。色々調べて、これじゃないかなって思い当たった」 伊達に今日を繰り返していないという訳か。それにしても、柊美雪は今までの印象をどんどん塗り替えていく。不思議で、近寄りがたくて、自らも人を避けて……、どこか触れちゃいけない部類の人間だと思っていた。これだけ明るい性格ならクラスの中心にいそうなのに、今はそうじゃない。僕たちの印象を変えてしまう程の時間が流れたのか、それとも久しぶりに話が通じて嬉しいだけか。 「というと?」 問うと、柊美雪は勿体ぶるようにたっぷり間を空け、それから口を開いた。 「シュレディンガーの猫って知ってる?」 「……確か、猫の入った箱に毒ガスか何かを入れるってやつかな?」 「そう、そんな感じのやつ。それでその箱を開けるまでは生きている猫と死んでいる猫が同時に存在しているって」 「それが今、僕たちが置かれている状況とどう繋がるって言うの?」 「要はね、観測の問題だと思っている」 「観測?」 いまいち要領を得ない。続きを促す。 「ある意味不老不死を手に入れた私は色んな人と話したの、それこそこの学校中の全員といっても過言じゃない。もちろん坂上君もその内の一人」 今日まで柊美雪と話した記憶なんて僕にはないけど、そういう今日も存在したらしい。
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