カナリヤを白日の空に曝せ

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 蝉の鳴き声が響く中、墓石の前で私とヨウ汰は手を合わせている。車椅子に乗った父は、辺りをキョロキョロ見回している。  お線香の煙が顔を掠める中、目を閉じて思った。  母の言葉を。  母は、結婚を望んでいなかった。  実家を守る為、家族を守る為に結婚して妻になって、子どもを産んで母になった。    そして死ぬ瞬間に、全てを置いていった。  『墓場まで持っていってくれないのか』なんて言ってやれば良かったかな。なんてあの時は考えたけど、今は違う。  母の呪いも、父の魂も、私が持って行く。  墓場まで。  「・・・そろそろ行くね、お母さん」  そう言って立ち上がると、活けた花が少し揺れた。  霊園の出入口に近付くと、車とスズ絵おばさんが待っていた。  ヨウ汰は父の車椅子を押しながら、不安そうにこちらを見る。私はその視線に気付き微笑む。そして私は1人、車へ真っ直ぐ歩いて行く。  スズ絵おばさんが微笑みを浮かべている。この人の目に写る私は、まだあの籠の中の小鳥なんだろう。  だったら籠の中だけでも、死ぬまで鳴き続けてみせる。母よりも。  私も微笑み返し、2人で車に乗り込んだ。  穏やかな昼下がり、テラスで走り回る小さな男の子を眺めている。  「おかあさん」  反対側から小さな女の子が声をかけてきた。  「おかあさんは、どうしておとうさんとけっこんしたの?」  女の子が可愛らしく尋ねる。  私は小さく笑って答えた。  「そういう運命だったのよ」
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