カナリヤを白日の空に曝せ

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 「お母さん、大丈夫だよね・・・?」  「・・・医者は手術は成功したと言っていただろ」  母が入院してから一週間後の夜、父はそれだけ言うと居間から出て行った。  私とヨウ汰はお互い不安気に顔をしかめていると、居間の扉が開いた。  「スズ絵おばさん!」  いつも艶やかな髪をきっちり纏めた着物姿。親戚であるスズ絵おばさんが入って来た。  「2人とも大丈夫?」  「・・・うん、まぁ・・・」  「おばさん、お母さんが入院してるんだ・・・」  「聞いたわ。心配ね・・・」  スズ絵おばさんが私達の側へ来て肩を抱き締める。  私とヨウ汰もその手を握る。  「でも大丈夫よ。あなた達もこのお家も、私が守るから」  そう言って微笑むスズ絵おばさん。ヨウ汰は笑っていたが、私は何となく背筋が冷たくなった。  「・・・カホ莉、いつもごめんなさいね」  「謝らないでよ。家族なんだから」  窓から入るゆるやかな風を浴びながら、ベッドに横たわる母を見つめる。個室の病室は広々として清潔だが、ひどく静かに思えた。  母の弱々しい声や呼吸が響くほどに。  「・・・カホ莉」  「なぁに、お母さん」  「・・・ごめんね」  「謝らないでってば」  「・・・最後に、カホ莉に話したい事があるの」    「最後なんてやめてよ・・・何?」  沈黙が響く。壊すのは、母だった。  
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