カナリヤを白日の空に曝せ

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 家に帰り、自室のベッドに顔を埋める。  父も母も私も弟も、何の為に生きているのか分からなくなった。  悲しくて、悔しい。  行き場の無いわだかまりに器官が圧迫されていくような感覚の中、ふと人の気配がした。  振り返ると、ヨウ汰が立っていた。  「・・・ヨウ汰・・・どうしたの?」  「・・・っ・・・」  「え?なに?」  「・・・っぅ・・・、っぁ!・・・」  苦悶の表情を浮かべながら、ヨウ汰は口を開ける。  でも何の音も響いて来なかった。  失声症。  激しいストレスが起因していると医師は言った。  母が亡くなってからおかしくなっていった父を危惧した親戚達により、ヨウ汰は私の知らない所で戦わされていたのだ。  ヨウ汰の助けを求める声に、気付いてあげられなかった。いや、その兆候はあったのに私は気付かないふりをしていたのかもしれない。  活発だったヨウ汰も塞ぎ込むようになり、屋敷の中は一層静まりかえっている。    私も自室に籠り、頭を抱えていた。  本を読んでも頭に入ってこない。  「・・・ません!旦那様!」  窓の外から声が聞こえたので見ると、車椅子から落ちた父が見えた。  私は急いで庭へ出る。するとお手伝いさんの声がまた聞こえた。  「いけません!旦那様!危ない!」  声がする方へ向かうと、鯉が泳ぐ池に父が浸かっていた。  「お父さん!」  「あぁ!お嬢様、旦那様が・・・!」  狼狽えるお手伝いさんを通り過ぎて父の元へ向かう。同じく池に入り父の腕を掴む。  「お父さん、駄目だよっ」  「ナツ子はどこだ?」  手が強張り、固まる私。  父は辺りをキョロキョロと見回す。  「ナツ子、ナツ子はどこだ?」  子どものように無邪気に、縋るように探す父。  母との会話を思い出す。
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