2人が本棚に入れています
本棚に追加
「最後に、カホ莉に話したい事があるの」
「最後なんてやめてよ・・・何?」
「・・・お母さんね、本当は結婚なんてしたくなかったの・・・」
沈黙が響く。壊すのはやはり、母だった。
「お母さんの実家ね・・・もう無いんだけど、大きなお家でね・・・裕福だったの・・・。
でも、お父さんの事業が失敗して・・・お金も、何も・・・無くなっちゃったの・・・」
母の掠れた弱々しい声だけが、病室に響く。
「そんな時に・・・お見合いの話しがきて・・・お母さんね・・・その時、好きな人が・・・いたの。
だからできないって、言ったの・・・でも家族を・・・守らないと・・・って・・・」
咳き込む母。
私は何も言えないまま。
「・・・結婚してからも・・・大変だった・・・良き妻、良き母に、なろうって・・・。
だから・・・やっと・・・手放せる・・・」
「・・・なんで、それを私に言うの?」
振り絞った言葉。
母がこちらを見て、微笑む。
「・・・最後くらい、何もかも置いていきたいの」
最初のコメントを投稿しよう!