カナリヤを白日の空に曝せ

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 「最後に、カホ莉に話したい事があるの」  「最後なんてやめてよ・・・何?」  「・・・お母さんね、本当は結婚なんてしたくなかったの・・・」  沈黙が響く。壊すのはやはり、母だった。  「お母さんの実家ね・・・もう無いんだけど、大きなお家でね・・・裕福だったの・・・。   でも、お父さんの事業が失敗して・・・お金も、何も・・・無くなっちゃったの・・・」  母の掠れた弱々しい声だけが、病室に響く。  「そんな時に・・・お見合いの話しがきて・・・お母さんね・・・その時、好きな人が・・・いたの。   だからできないって、言ったの・・・でも家族を・・・守らないと・・・って・・・」  咳き込む母。  私は何も言えないまま。  「・・・結婚してからも・・・大変だった・・・良き妻、良き母に、なろうって・・・。   だから・・・やっと・・・手放せる・・・」  「・・・なんで、それを私に言うの?」  振り絞った言葉。  母がこちらを見て、微笑む。  「・・・最後くらい、何もかも置いていきたいの」
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