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隣の小学校もまだ下校時間じゃないから、大げさにするとパニックになってしまうだろう。事は極秘裏に進めなければならなかった。オレ達はグランドの外側を迂回し、保育園に近づいた。
オレらのいる、ちょうど目の前に、ヤツのゴクローサンがあるのが見えた。「よし、ヤツはまだいるな。張り込むぞ。クロとシロは、悪いが保育園の庭に入って見張ってくれ。で、ヤツが動いたら知らせるんだ。頼んだぞ」
とオレは二人に指示し、レイを呼んだ。オレが考えた作戦を伝えるためだった。
小声で(レイ、いいか、一芝居打つから頼むぞ)と言って内容を話す。レイは、「ぇ~?私できるかしら……」
と消極的になっている。さっきまでの元気はどこにいった?ちょっぴり心配になった……。
この街は港から外れると、ちょっとした平野を通り、川沿いの国道に沿って上流に向かって集落がポツリポツリと点在している感じだ。川の両側の山が意外に高い。この時間になると山に太陽が隠れて、気温が下がってくるのだが、今日は暑いままだ。
クロ達は偉いな、この暑い中、毛皮着てて。とか思った時、「バカなの?」
クロがいつものセリフを言った。「私ら猫は、毛皮を着てるんじゃなくて、これは体の一部。夏は夏毛になって快適だし、冬は冬毛でとても暖かいのよ?」
と説明してくれた。自然界はうまいことできてやがんな。
とっ!!「動いた!」
クロが頭の中で叫んだ。すぐに男が保育園の出口から女の子の手を引っ張って早足で出てきたのが見えた!
「おらァーーーーー!!!」
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