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3.オカコー巡査、本部長に呼ばれる!
オレはなぜかレイと一緒に警察本部の待合室にいた。オレの街から遥か離れた場所だから、クロとは会話ができないことがわかった。だいたい、20kmが限度のようだ。
その数日前、オレとレイは本署の署長室に呼ばれていた。最初は何かの不手際があって叱られるのではないかとビクビクしていたが、レイと一緒だから、その可能性はほぼないと思っていい。
そして署長は満面の笑みで現れた。「いやいやいや、君たち、この前は本当に良くやってくれた。お手柄だよ」
と顔中にしわを集めて喜んでいる。たぶん、この前の事件のことを本部に報告した際に、もっと上の誰かから褒めてもらったのだろう。署長の低い鼻が、だいぶ高くなったような感じだ。
署長はゴキゲンだった。数日後に、レイと二人で警察本部に行くように、と言って封筒を差し出してきた。オレは何かの書類かなと思い、中を見ようとしたとき、「まぁまぁまぁ、帰りに二人でおいしものでも食べてきなさい」
と言いながら、オレの手を制した。
出発の日は、朝6時に10分ほど前にレイが現れた。時間少し前に来たのはさすがだな。と思った。
レイに今日の仕事について「休んだのか?」
と聞くと、診療所に署長自ら電話してきて、今日のことを直接頼んできたということだった。あのタヌキオヤジもなかなかやるじゃないか。
レイは「私の車で行きましょうか?」
と言っていたが、それだけは断固阻止した。今日はジェットコースターに乗りたい気分じゃないしな。
途中の喫茶店でモーニングサービスを軽く食べ、本部には予定どおり9時少し前に着いた。受付で呼ばれてきた旨を伝え、来庁者用の首から下げるカードをもらって、待合室にいるというわけだ。
何かの表彰をもらえるらしいのだが、オレはたいして興味はなかったのが本音だった。「どうせ紙切れ1枚で終わりさ」
ごく小さな声で独り言を言った。
そうしていると、総務課の者ですが、と言いながら女性が迎えにきた。エレベーターで5階に案内される。オレは何も悪いことはしていないのに、このドナドナ感はなんだろう?そうして総務課の中に入ると、さらに奥に案内され、「本部長室」とプレートに書かれた部屋の前のソファで待つように言われた。
心臓がバクバク言ってやがる。かつて本部長を見る機会などほとんどなかったし、ましてや本部長室に入ったことなどあるはずがなかった。その点、レイは平然としていた。同じ組織の者ならそうはいかなかっただろうが……。
すぐに本部長室に数名が入っていくのが見えた。1分もせずに、見るからに秘書という感じの美人から、「こちらへどうぞ」
と招き入れられた。オレは緊張のピークに達したのがわかった。
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