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笑う 声が 響く。ねぇ。
少し 過去の続き
巡り エンドレスに
巡る 今。
サプライズのつもりが
逆サプライズになった祖母宅訪問。
「実結ちゃん来るなら予定空けといたのになあ」
残念そうに祖母が言いながら
「デート代に使い!」とお小遣いをくれた。
「はよ終わったからどっか行く?」
「私ね、行きたい神社がある」
「あ、この近くの」
全国的に有名な大きい神社がある。
「そこは前に一人で行ったの。行きたいのは地下鉄に乗って何駅かなんだけど……」
実結が路線図で駅名を確認して指差す。
「何社かあるよな?」
「私が行きたいのは真田幸村終焉の地って呼ばれてるとこ」
「えっ?」
「知らない?」
「いや、知ってるけど……」
そもそも実結の口から真田幸村という名前を
初めて聞いた。
「小さい神社なんだけど猫がいて癒やされるよ」
「実結は行ったことあるん?」
「ずーっと前ね。中学生くらいの時」
猫を愛でる女の子を思い出す。
「そうなんや。何で真田幸村なん?」
「戦国ゲームの推しキャラだったから(笑)」
気が合うのは昔からやったみたいやな。
神社は何年経ってもひっそりしていたが
心なしか綺麗になっていた。
参拝を済ませて実結は猫を探し始めた。
社務所の横にいた一匹を撫でる。
いつぞやかの光景と被る。
今日は初恋の相手を見つけた時点で
お腹いっぱいなんやけど。
松の木の下に腰を下ろす。
「紀樹?」
今度は猫ではなく俺を見つけた実結が
にっこりと微笑む。
そして、笑った。
「前に来た時もそうやって座ってた人がいたの(笑)」
「うん」
「ちょっと幸村っぽいな~って思ったらついカメラのシャッター押しちゃって……」
「へ?」
人がいると思わんかったって言ったよな?
「シャッター音で気付かれて睨まれて怖かった」
「あほやな」
別に睨んだわけちゃうんやけど。
「ちゃんと声掛けてから撮らせてもらえば良かった」
「先に言われたら断ってたけどな」
「やっぱりそう思う?」
「本人が言うんやから間違いないやろ(笑)」
堪えきれずに笑いが込み上げた。
幸村っぽいって何やねん(笑)。
「えっ、えっ、本人ってどういうこと?」
「やっぱり現像した写真、送ってくれへん?」
「何で紀樹が知ってんの?!」
「人生初の逆ナンやったからな(笑)」
逆ナンじゃないって怒るかと思ったら
実結は頬を赤らめていた。
何や?
「……横顔がかっこいいなと思ったんだもん」
「は?」
「良かった。キュンとした子が紀樹で」
「何やねんそれ……」
ばつが悪そうに照れ笑いを浮かべる実結の
潤んだ瞳が可愛くて抱きしめた。
「俺らは必ず出会うように仕組まれてるんやな」
「中学生の時に付き合ってたら遠距離恋愛だったね」
「そうやな(笑)」
「高校生の時に付き合ってたら……」
「それまだ続く?(笑)」
実結が腕の中から俺を見上げる。
「紀樹の最初の彼女になりたかったんだもん」
「俺やって実結の最初の男になりたかったけど?」
「それは意味が違って聞こえる……」
恥ずかしそうに目を逸らすのが愛しい。
小指を絡ませる。
結ばれた赤い糸がほどけないように。
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