ササヤカな糸

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探しものは何ですか。 そこにあっても気付かず ばら蒔かれた欠片集め 答え合わせをしてみませんか。 実結を実家に連れて行った冬。 仕事で大阪へ行く用事があって 実結にも一緒に来てもらうことにした。 「俺のばあちゃん家行けへん?」 「そっか。大阪で一人暮らししてるんだよね」 「ババ友が腐るほどおるから退屈はしてへんで」 仕事が休みの日 実結を連れて祖母宅へ向かった。 二人で一緒に行くことは内緒にして 老舗の和菓子屋のようかんを手土産に マンションのインターホンを押す。 「ノリちゃん、いらっしゃい!」 祖母は白髪を茶色に染めて パッと見るとかなり若返っていた。 「ばあちゃん、髪オシャレやん」 「せやろ?って後ろにおるんはタカちゃんか?」 「どこが隆人に見えんねん」 そう言うと実結が隣に並んで 「こんにちは。実結です」 とお辞儀した。 顔を上げた実結と目が合うと 祖母は大きく目を見開いた。 「えっ?!ほんまかいな!!」 あまりの驚きっぷりにサプライズは大成功。 「そんなビックリせんでもええやん(笑)」 「そうや!実結ちゃんや!!」 「え、何なん……?」 「ようお姫様見つけたなあ!」 頭の中がハテナだらけの俺たちを招いて リビングに座らせると 祖母は棚に置いてある写真立てを持ってきた。 セピア色の俺と少年のような女の子。 こんな初恋らしき幼なじみとのツーショットを 実結の前に晒したらあかんやろ。 「ばあちゃん、こんなん出さんといて」 チラッと横目で隣の実結を見ると 浮気現場を見たかのような驚いた顔をしている。 「この写真……。何でここにあるんですか?」 口を開いた実結に祖母がニコニコと答えた。 「ノリちゃんと一緒に写ってんの実結ちゃんやろ?」 「はい。えっ、ノリちゃん……って?」 「ノリちゃんは紀樹やろ。この子は実結ちゃんなんやろ?」 「はい、え……っと。私ずっとノリちゃんって女の子だと思ってました……。紀樹……くんが、ノリちゃん??」 聞いている俺が一番サプライズを喰らった。 実結は幼い頃に大阪に住んでた時期があって その時に一緒に遊んでいた子の写真として 実家に同じ写真が残っているという。 そんな偶然あるんか?! 「ノリちゃんな、ボクちゃんと結婚する~って言うててんで」 「私小さい時に自分のことボクって呼んでた……。ノリちゃんが、紀樹?」 「二人でちゅーまでしてたからな。責任取らさなあかんと思っててん(笑)」 お茶を飲んでたら確実に吹いてたわ。 嬉しそうな祖母の高笑いが響く。 「やっぱりしてたんや……」と思わず口元を押さえた。 「えっ、紀樹覚えてるの?」 そんな話の後で顔を見られると照れるわ。 「ばあちゃん、その子の名前は果物やって言うたやん」 誤魔化すように祖母に聞いた。 「あー、せやせや。みゆちゃんの漢字って実を結ぶ、やろ?」 「で?」 「紀樹に英語教えててん。努力は実を結ぶんやで、って」 「I’m sure it will bear fruit.でフルーツのイメージ残すんはナシやろ」 「pear(ペア)だけにな(笑)」 「それは梨やろ。何言うてんねん」 横で「漫才みたい(笑)」と笑ってる実結の 真ん丸い目が少し細くなる。 あどけない笑顔は小さい頃から変わらない。 知りたかった君の名前と変わらない笑顔を前に 俺は運命の人を見つけた。
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