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同じような姿の、と形容されているところからするに、どうやらその少女もXや目の前の人と同じ「人間」の姿をしているということだろう。しかし、Xがこの『異界』に降り立ってから、そのような少女を見かけた記憶は私には無い。
Xは「いえ」と首を横に振り、それから逆に問いかける。
「迷子ですか?」
「はい、はぐれてしまって。見知らぬ土地に加えて、言葉も通じないときたものですから。きっと、彼女も困っていると思います」
心底困り果てた調子で言う男に、Xはきっと少なからず同情したに違いない。ほとんど間髪いれずにこう言ったのだから。
「私でよければ、お手伝いしますよ」
「本当ですか」
「一人より、二人の方が見つかる可能性は高いでしょうから」
Xは少女の特徴をもう少し詳しく聞いて、それから男と待ち合わせの場所を決めた。このごみごみとした街の中でもよく目立つ不思議な形の塔の足元。
「日が沈む頃には、そこで落ち合いましょう」
黄みの強い緑の空には、二つのちいさな太陽が輝いている。太陽の位置からすると、日が沈むまでの時間は、さほど長いわけでもなさそうだった。
少女の足ではそう遠くには行っていないと思うのですが、という男の言葉にXはひとつ頷いて、男とは別の方角に歩き出す。全くちぐはぐな取り合わせの建物の立ち並ぶ街の中、形も色もとりどりの人々の間を歩いて行くのだ。
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