未来から

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 外は激しい雨に襲われ、喫茶店に人がなだれこんだ。店内はすぐに満席になる。  もしも外にいる時にこのゲリラ豪雨と遭遇していたら、俺のスーツはびしょ濡れになり、その後の営業にも差し障りが出ていたに違いない。 「もしかして、最初から雨を回避するためにここに誘ったのか?」 「そうです。本来なら商談は失敗し、あなたはノルマを達成できなくなるところでした。会社でお荷物扱いされ、リストラ候補のリストに名を連ねることにもなります。そうならなくて、本当に良かった。あなたが気になっている会社の同僚の坂上さん、あなたがリストラされると噂を聞いて、他の男性と付き合うことにしてしまうんです」  俺は言葉を失ってしまった。坂上えみは俺が密かに想いを寄せていた同僚で、この前連絡先を交換したばかりだった。その時は好感触だったので、もしかしたら交際に発展できるかもしれないと思っていた。  奏多に会わなければ、えみに振られる運命だったというのだろうか。 「未来のことを言えない決まりじゃなかったのか? どうしてそんなことを教えてくれるんだ」 「僕のいる遠い未来ではあまり影響力を持たないことだからです。僕はあなたにできるだけ幸せになってほしい。これは僕の完全な善意なんです」  綺麗に澄んだ瞳で、奏多は俺を見た。
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