雅人が帰省する。

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「繭ちゃん、大丈夫? 東京から、ずっと運転したの?」 久しぶりに会う親友に、なんて説明すべきか分からない。 正式に付き合ってるというのは、電話で報告してあるけれど、その時でさえ、びっくりしていた。 「うん」 「すごいね。繭ちゃん、ペーパーだったんでしょ?」 徹くんも王子から話を聞いたようだ。 「うん、そう。王子、会社の打ち上げで、実家から連絡が来る前にもう飲んでたから」 「田口君、おばあちゃんに会えた?」 「会えたよ。でも、もう昏睡状態。89歳だって」 「そっか。大往生だね。でも、家族は寂しいな」と葵が言う。 彼女も子供の頃、おばあちゃんと同居していて、亡くなった時は、すごく悲しんでいた。 「うん。王子、おばあちゃん、大好きだったから」 おばあちゃんに、お別れ。 お別れの前に、この人と結婚するよって言いたかったんだろうな。 寝ているおばあちゃんに、挨拶したの、伝わっただろうか。
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