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「うん。分かってる。凄く嬉しい!」
興奮状態の私を宥めるように抱きしめて、おでこにそっとキスすると、「明日の朝、連絡するから、今日はちゃんと寝て」と言った。
「うん」
っはあ。
落ち着こう。
「……明日、様子次第で、その後、どうするか決めるから」
王子が、おばあちゃんがいつまでもつだろうかという、その言葉を言えないでいる。
「うん。私は気にしないでいいから。連絡だけ、できるときに、ください。私からは、今は、迷惑だといけないからしないから」
「ん」
軽くさっき地面についた膝を片手で払って、微笑んだ。
「雅人。そばにいるから」
「ん。ありがと」
車が一台、駐車場に入ってきて、近くに停まった。
王子はそれが徹君の車だと知っていて、駐輪場に入って来たのを見て、自分の車から私のバックを出してくれた。
運転席に向かって、王子が「遅くに悪いな、徹。葵さん、繭、お願いします」と軽く頭を下げた。
「全然、大丈夫です」
葵が助手席から出て、「田口君、大変だね。ご家族の皆さんによろしくね。繭ちゃん、後ろ乗って」とドアを開けてくれた。
「連絡する」
そういって、王子がバックを渡してくれた。
「うん」
車に乗って、軽く手を振ると、王子は病院の中へ戻っていった。
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