雅人が帰省する。

15/54
1960人が本棚に入れています
本棚に追加
/363ページ
「うん。分かってる。凄く嬉しい!」 興奮状態の私を宥めるように抱きしめて、おでこにそっとキスすると、「明日の朝、連絡するから、今日はちゃんと寝て」と言った。 「うん」 っはあ。 落ち着こう。 「……明日、様子次第で、その後、どうするか決めるから」 王子が、おばあちゃんがいつまでもつだろうかという、その言葉を言えないでいる。 「うん。私は気にしないでいいから。連絡だけ、できるときに、ください。私からは、今は、迷惑だといけないからしないから」 「ん」 軽くさっき地面についた膝を片手で払って、微笑んだ。 「雅人。そばにいるから」 「ん。ありがと」 車が一台、駐車場に入ってきて、近くに停まった。 王子はそれが徹君の車だと知っていて、駐輪場に入って来たのを見て、自分の車から私のバックを出してくれた。 運転席に向かって、王子が「遅くに悪いな、徹。葵さん、繭、お願いします」と軽く頭を下げた。 「全然、大丈夫です」 葵が助手席から出て、「田口君、大変だね。ご家族の皆さんによろしくね。繭ちゃん、後ろ乗って」とドアを開けてくれた。 「連絡する」 そういって、王子がバックを渡してくれた。 「うん」 車に乗って、軽く手を振ると、王子は病院の中へ戻っていった。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!