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葵の家についたら、もう2時を過ぎていた。
葵が眠いだろうに、客間にお客様用のお布団を出してくれる。
二人で畳に座り込んで、シーツを一緒にかけながら、葵に話しかけた。
「葵、あのさぁ」
呼びかけると、葵は枕カバーを掛ける手を止めて、こっちに顔を上げた。
「何、繭ちゃん?」
「婚約した」
こんな時にどういう事だと思うかもしれないけれど、私にとっては、一大事だ。
「え⁈ わぁー。そうなの? えー。いつ決めたの?」
葵の顔がパッと明るくなった。
「さっき」
「えー! さっき? さっきって、迎えに行く前?」
びっくりして、声が大きい。
「うん」
「へぇー。スゴイ。すごいー‼」
完全に女子会ノリだ。
「悪いよね。こんな時に」
ご家族が、王子が、悲しんでいる時に、私の頭の中は結婚で一杯になりそうだった。
「田口君が言ったんでしょ? それなら、良いよ。そういうタイミングだったんだよ」
「うん。おばあちゃんに言いたかったみたい」
「そうかー。そうだよね。大事な人は紹介したいよね」
急に少ししんみりした口調で何か考えている様で、はっと徹君の結婚式でのスピーチを思い出した。
徹君、スピーチで、葵を数年前に亡くなったお母さんに会わせたかった、と言っていた。
「うん」
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