第十二章 Fly me to the moon

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第十二章 Fly me to the moon

「う……」 「起きたか。遥」  遥は、ゆっくりと目を開けた。  ベッドに横になり、掛布を被っている。  パジャマも着ており、何ら不審な点はない。  ただ、隣に了が寝ている。  優しいまなざしで、こちらを見てくれている。 「僕。僕……!」  思い出した。  お薬飲まずに発情して、そして。 『抱いてください、了さん。お願い』 『ああ……、早く……』 『ぼ、僕ッ。お客様に抱かれるたびに、了さんのことを想ってました……!』  僕ったら、何て恥ずかしいことを!  慌てて再び瞼を閉じた遥に、了はくすりと笑った。 「その様子だと、忘れてないな?」 「ごめんなさい! 僕、失礼なこと、いっぱい言いました!」 「失礼なもんか。嬉しかったよ」  それから、と了は掛布を頭まで被ってしまった遥の髪を、くしゃりとなぶった。 「私の言ったことは、覚えていてくれてるか?」 「……はい」
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