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結婚は今や人生に彩を、をコンセプトとしたエンターテイメント化が進んでいる。各式場は様々なプランを出し、顧客獲得の競争が激化していた。
特にVRを使った映像は大人気で、幻想的で感動するものから海外の世界遺産の中で結婚式を挙げているような気分を味わえるもの、美しいマリンブルーの海の上に浮いているかのようなものまで新郎新婦の要望に合わせた映像が人気である。
今日も一組の若い男女が結婚式プランを相談に来た。プロジェクションマッピングだけでも100種を超え、何にしようかと悩み始めている。すると担当スタッフの女性がにこやかにタブレットを見せてきた。
「実は今お試しの企画がございまして、VRで体験する新プラン提案です。こちら企画がどうだったかアンケートにお答えいただけるなら体験費用はかかりません。何種類かございますが、いかがですか?」
「あ、面白そうね、ちょっとやってみない?」
「いいね、まだ誰も使ってないプランって事だし。全部体験してみよう」
女性も男性もにこにこと楽しそうだ。スタッフが大きめなゴーグルを持ってきて二人は装着した。目の前にログイン画面が表示され、すぐに画面が切り替わる。
そして映し出された光景は広大な宇宙。目の前に地球、月、遠くに惑星や衛星が見える。きらめく無数の星に囲まれ、わあ、と二人は声を上げていたがすぐにスタッフの大声にかき消された。
「避けて下さい!」
「え!?」
何が何だかわからないが咄嗟に二人は顔を伏せた。すると頭上すれすれのところを巨大な隕石がとんでもないスピードですっ飛んでいく。
「危なかったですね、当たっていたら生命維持に影響が出るところでした」
「ちょちょ、ちょっと待って! 今のナニ!?」
女性がパニックになって男性にしがみつく。
「こちらの映像宇宙開発事業の衛星から映像をお借りしたのですが、このゴーグルは体感度を上げるために衝撃を再現する仕様でして」
「殺意高いな!?」
思わず男性も叫ばずにはいられない。
「何なんだよこのプラン!」
「生命の始まり、すべては宇宙から始まった。二人の出会いも何京年も前から決まっていたことなのです、というようなアナウンスが流れる予定です。隕石や太陽フレアと共に」
「いや隕石とかいらないだろどう考えても」
「最大の目玉は超新星爆発ですよ?」
「会場全員死ぬだろ!」
超新星爆発を知らない女性は軽く首を傾げるが、恋人の男性が怒っているので隕石以上にヤバイんだろうなと思った。そもそも爆発という単語が出ている時点でヤバイのだが。
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