凄腕！ 結婚プランナー！

　その後二人は飛行機が謎の墜落をして首狩り族が支配する島に流れ着き参加者が一人ひとり消えていく中どう立ち向かってどうやって首狩り族を狩るかの体験をし、粘菌が人に寄生して人の脳を食い荒らし脳の擬態をして人のふりをする世界で相手が粘菌だったとしても愛せるかをコンセプトにしたホラーサスペンスを体験し、サイバー戦争を経験し、異世界の壮絶な魔女裁判を経験し、勘違いメンヘラ女（ターゲットは男性）と人の話を聞かないストーカー（ターゲットは女性）によるぐっちゃぐちゃのドロドロ人間関係ドラマを体験し、あと十日で地球が滅びるという世界での倫理もクソもなくなったサイコパスしかいない中での式を体験し、もし日本人全員が年収五千円だったら？　という世界の段ボール生活の中での式を体験した。

　ぐったりと一言もしゃべらなくなった二人にアドレナリンが２００％くらい出てそうなテンションの高いスタッフは意気揚々と語り掛ける。

「次でラストですよ！　張り切っていきましょう！」

　ちなみに体験コースは途中でやめると深刻なエラーになるのでゴーグルは外せないらしい。深刻なエラーはシステムエラーなので百万近い請求となる、と聞いて大人しく体験していたが二人のライフはゼロだ。

「最後！　しかしこれは一番地味なんです」
「……。じ、み……？」

ゾンビみたいな顔をした男性がくらくらする頭でなんとかプランを見る。

「小さな教会で神父様がお祈りをささげ、誓いをします。お式は親族とご友人のみ、披露宴は関係者を呼んでミシュラン一つ星のレストランの食事と催し物。催し物は従来のウケてるようで微妙に滑ってる上司や部下の寒いエピソードトークではなく、こちらで用意したオーケストラによる演奏、１０分ほどの美しいプロジェクションマッピングなどパッケージオプション５種類からお選びいただけます。オプションをお付けして三百万ほどです。まあこれはつまらないので、私のお勧めは首狩り族の……」
「そのプラン、詳しく！！」

　急に生気を取り戻した男女は食い気味でスタッフに叫び、スタッフは「えー」と言いながらプランを紹介する。いわゆる普通の結婚プランだが、本当に幸せを共有したい家族や友人と迎える式のすばらしさを語るスタッフの言葉に二人は真剣に耳を傾け、申し込みをした。