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「よ、お疲れ。また一組予約してもらったらしいじゃん。さすが我らがトップ営業、凄腕プランナーだな」
スタッフルームで缶コーヒーを飲むスタッフの女性に、同期の男性が笑いながら言った。女性はふっと微笑む。
「まあこんなもんよね。ちょっと値は張ったけど、VR映像制作してもらってよかった。あと二組予約してくれれば余裕で元取れるし、前年比350%行く予定だから」
「それにしても、ウチに最大の利益が出るプランをよくそんだけ売り込めるよなあ。まああんなトンデモプラン見せられちゃ普通が一番だって思うわな、俺だってやだよあんな結婚プラン。何で結婚式で超新星爆発するんだよ意味わかんねえし」
ケラケラと笑う男性に女性もつられて笑った。
「他の式場で見積もり取るって選択させないのが私の腕の見せ所だからね。まあ正常な判断できないくらい憔悴させてるのはわざとなんだけど。それにしてもほんと、日本人って感応度逓減性とかおとり効果とか極端回避性とかひっかかりやすいよね、ちょろいわ」
あんなよくわからない物をやるくらいなら、思い出に残る三百万に価値がある、と勘違いをする。
スケールが大きなものを見ると、価値があるはずの他の物が大したことないように見えてしまう。
高すぎるもの、低すぎるものがあると妥当そうなその中間をとりたがる。
もっと低予算で思い出に残る素晴らしいプランはいくらでもあるというのに、金額や規模が大きくなるとその感覚は麻痺しがちだ。
結婚プランいう大切な事はその場で決めずに、持ち帰って比較することをお忘れなく。
END
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