ねぇ、覚えてる?

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「ねぇ、覚えてる?」  目の前にいる可愛い少女が顔を赤らめながら、 「私とエッチしたこと……」  と僕の耳元でこっそり(ささや)いた。 「でも、お兄ちゃんって簡単に記憶を失ってしまうから、私とをしたこともすっかり忘れちゃうんだよね。あーあ、残念だな。もし覚えていたら、あの時の続きをしようかなって思ってたのに……」  少女は僕の反応をチラチラ見ながらクスクス笑っている。 「ふふっ……冗談だよ。私とお兄ちゃんがそんな関係になることなんて無いよね」  少女は笑顔のまま、僕の周りをくるりと笑って、僕の脇腹(わきばら)をツンツン(つつ)いた。 「ふふっ、ふふふ……お兄ちゃんの反応って、本当に面白いな。折角(せっかく)だし、このまま、本当に……」  少女は上目遣(うわめづか)いでこちらを見つめる。少女の背丈(せたけ)は僕より頭1つ分小さく、僕の視点からは角度的に少女の胸が見えそうになって……咄嗟(とっさ)に目を()らすと、少女はまたクスクス笑った。 「お兄ちゃんって本当にエッチだね。私のぺちゃんこなちっちゃい胸でも興味(きょうみ)(そそ)られるの?」  少女はその年齢に似合わぬ妖艶(ようえん)な笑みをし、身を(かが)めた。すると少女の着ている清楚(せいそ)なワンピースの胸元(むなもと)に少しだけ隙間(すきま)()き、(なか)のブラジャーがチラリと見え、その(ふく)らみも見えそうになって……少女はそうして自分の胸元をこちらに見せ付け、僕の反応を(うかが)っているのだ。 「お兄ちゃん、私のちっちゃい胸でも、気になるのかな?」 「い、いや、そんな事は……」 「そうだよね。お兄ちゃん真面目(まじめ)だから、私がこうやって露骨(ろこつ)挑発(ちょうはつ)しているのに全然私に興味を(いだ)かないんだよね……いつになったら私の気持ちに気付いてくれるのかな? それとも、気付いているのに気付かない振りをしているのかな? それは……私がお兄ちゃんの妹だから?」  少女はニヤリと笑った。  僕の胸がトクンと鳴り、身体がよろめいた。 「そりゃ、妹にはそう簡単(かんたん)には手を出せないもんね。手を出したら大変な事になっちゃうかもしれないわけだし。でも、本当は私に興味を持っているんでしょ? 手を出してみたいと思ってるんでしょ? 私、知ってるんだよ?」  少女は(あせ)る僕の反応を見て微笑んだ。 「(うそ)だよ。全部嘘だから、安心してね? 帰ろっ、お兄ちゃん」  少女はくるりと向きを変えてこちらに背中を見せ、そのまま家に向かって歩き出した。 「待って、美夏(みか)……」  僕の声を聞いて、美夏は振り向いた。でも(うつむ)いて、僕の顔を直接見ようとしない。美夏の(ひとみ)はうっすら(うる)んでいる…… 「行くよ、お兄ちゃん。もうっ、本当、お兄ちゃんって遅いんだから……」  そう言うと美夏はまた家に向かって歩き出した。  僕は慌てて美夏の後を追った。  と、美夏は急にくるりとこちらを向いた。  美夏は潤んだ瞳のまま、僕を見つめて言った。 「もし……今私が言ったことの全部が本当にあった事だとしたらどうする? お兄ちゃんは記憶を失う病気に(かか)ってしまって、過去のことを忘れてしまって、私とこともすっかり忘れてしまって、単に妹が兄を揶揄(からか)っているだけだと思い込んでいて、でも本当は……」  そこまで言うと美夏はクスクス笑った。 「冗談、冗談。嘘だから、気にしないで……」  美夏は笑っていた。でもその笑顔はなんだか僕には少し(さび)しげに思えた。 「帰ろっか……」  美夏は家に向かって歩き出した。その寂しげな背中を追うように、僕も家路(いえじ)()いた。
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