小銭入れ

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 翌日、松岡さんや竹部さんに小銭入れが見つかったと報告した。二人とも、自分のことのように喜んでくれた。  矢萩は勤務終了と同時に、上野警察署へ行った。受付で用件を伝え、三階に行った。建物はかなり古い。エレベーターも狭く動きが鈍い。階段も歩き難そうに見える。  新しい建物にすればいいのに、なんて思いながら担当部署に行き、中年の女性警察官に事情を説明した。彼女はカウンターから離れ後ろのスチールラックから濃茶色の小銭入れを持って来た。  矢萩は一目見て自分の小銭入れだとわかった。警察官は、届けた人は拾得物の権利を放棄しており、名前や住所はわからない、なのでお礼はしなくてよいと教えてくれた。  矢萩は担当者にお礼を言って、警察署をあとにした。小銭入れはショルダーバッグのポケットに入れ、きちんとファスナーをした。もう落とすのはイヤだ。
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