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矢萩は事情を説明するのが面倒だったから何も言わずに済ませてしまった。
午前十時頃の店内は、あまり客がおらず、店員がレヂカウンターで時間を持て余している。
矢萩は東南アジア系の店員に用件を伝えた。どこまで店員が理解してくれたか、多少不安があった。
店員は、首を横に振って小銭入れの落とし物はないと応え、困惑している。
矢萩は少し失望し、下を向いて守衛室へ戻った。
松岡さんが受付業務を行っていた。来訪者の予定は少なく、時々、遅刻の生徒が来るぐらいである。
矢萩は小銭入れにカードを一枚入れていた。たいしたものじゃない。使えないようにする必要もない。
中に入れていたお金は、約二千円。五百円硬貨が二枚、あとは百円や十円などだ。
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