うぃるみあ！ ―令嬢男子ミアと、運命の貴公子―

４ 宝物と、秘密の時間

　召使い用の通路をとおって、こっそりと裏口から外に出た。

　お屋敷の裏には、石造りの小屋が連なっている。パン焼き小屋、煮炊きする炊事場、お肉をローストする丸焼き小屋、ビールを作る醸造小屋。砂糖やスパイス、ワインを保管する鍵つき倉庫もある。ここは、コックやメイドたちの仕事場だ。

　まだ仕事をしているのは、皿洗いのメイドたち。石けんの泡にまみれながら、楽しそうにおしゃべりしている。

　さらに進むと、ローズマリーやタイム、フェンネルなどが揺れるハーブ畑。畑に沿って、オレンジやレモンが植わった鉢植えが並んでいる。

　その向こうにある、家畜小屋に忍び込む。牛にしっぽではたかれ、豚に突進され、ニワトリにつつかれながら、動物用の古びてき(・)し(・)む(・)扉を開ける。

　ここだけが、門番のいない門。
　お屋敷の敷地から抜け出す、唯一の抜け道だ。