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残った二人のごろつきたちは刃物を取り出し、じりじりと青年に迫る。ひゅう、と青年は口笛を吹き、腰に手をあてた。深紅のベストのすきまから、立派な鞘が見え、僕は焦った。
(まずい!)
このままじゃ、この人は剣を抜いてしまう。アランドルでは無許可の決闘は禁止されている。ばれたら処罰が待っている。僕のせいで、この人に迷惑をかけるわけにはいかない。
「だ、ダメです、剣を抜いたら! 僕のことならだいじょうぶですから、あなたは下がって……」
しどろもどろになりながら言うと、青年は僕の顔をじっと見て、にこっと笑った。あまりにもこの場にそぐわない、さわやかな笑顔だった。
「ああ、なるほど。君、かわいい顔してるね。だから狙われちゃったのか」
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