6 急いでいるなら、道より屋根を歩け

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 言うなりそのオレンジ髪の青年は、片手で僕の両足を、片手で背中を持ち上げた。まるでお姫様を抱きあげる王子様みたいに。 「君、軽いねえ」 「ち、ちょっと待っ、……わわっ!」  悲鳴をあげてしまったのは、彼が壁を足掛かりにして、屋根に飛び移ったからだ。足元で、オーク木材の屋根がきしみ、ギシッと音をたてた。 「や、屋根に登ってどうするつもり⁉  ……まさか⁉」  まさか、と言った時には、僕たちはすでに空中にいた。 「そのまさかだよ。しっかりつかまっててね!」
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