2 アルバートお兄様、ライアンお兄様

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2 アルバートお兄様、ライアンお兄様

「お父様がお戻りになったって本当ですか⁉」  長いスカートを両手で持ち上げ、階段を駆け上がり。ノックもせずに、お父様の部屋のドアをバタンと開けた。 「お父様!」 「ミア、久しぶりだな」  暖炉の前のひじ掛け椅子に座る、壮齢な男性。ゆったりした黒のナイトガウンを羽織り、口ひげをはやしている。目つきは鋭く、髪をびちっと固め、畏怖と威厳を感じさせる風貌だ。  お父様、ドルフ=アランドル。  伯爵の称号をお持ちになっており、ここ、アランドル地方を治める領主でもある。  普段はロンドンの仕事用の屋敷(タウンハウス)にお出かけになっていることが多い。貴族院でのお仕事や、社交にお忙しいからだ。そんなお父様がお帰りになるなんて、よっぽどのことがあったのだ。
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