滅ぶべき者

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滅ぶべき者

 教えられた通りに、鬱蒼と茂る森を抜けると視界が開け、ごつごつとした丘陵が現れた。  知らず知らずのうちに、高く登ってきたのだろう。草原に咲く花はぼくの見たことのない山花で、吹く風は涼しさというよりも、冷たさを感じさせた。麓では、まだ夏がひどく地面を照りつけているというのに。  およそ二日、飲まず食わずで歩いてきたため、足は疲れ、意識はぼんやりとしていた。  それでも頭の中には、拭うことの出来ない染みのように、あの男の声が鳴り響いていた。出発前に、何度も繰り返された言葉だ。  それがどんなに忌むべきものであろうとも、忘れてしまうことが出来ないのは、ぼくに刷り込まれた恐怖のせいだ。  ぼくの村は、子供から老人まで皆殺しにされ、征服された。それがいつのことだったか、はっきりと思い出すことはできない。ひと月前だったのか、それとも何年も前のことだったのか。
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